掌篇★ガチャポン

携帯掌篇のブログです。無断転載厳禁!

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

44.『川のほとりで』 

 約束の場所に辿り着くと迎えの姿はなく、鮮やな花々が咲き誇る川辺で水面に映る過去を眺めた。

 火の粉の中、乳飲み子を胸に抱き、残る手で幼子の手をひき走る女、あれは若き日の母だ。防空頭布を被った私は姉様人形を握っている。

 セーラー服の私が友人と手をつなぎ、唄いながら通り過ぎる。

 仲人に手を取られ輿入れする白無垢姿の私。

 ふくらんだ私のお腹を愛しげに撫でる二十代の夫。

 振袖姿の娘に腕を組まれ、カメラの前で笑う中年の私。

 杖にすがってよろけ歩く私は中学生の孫に支えられた。

 手をひかれ、ひき、いつのまにか又ひかれていた。「楽しかったね」皺だらけの掌に囁きかける。

 迎えに来た夫の手を取り彼岸へ渡る姿が、最後に川面に揺れた。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://zigzaggar.blog63.fc2.com/tb.php/46-b255b5e7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。