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掌篇★ガチャポン

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五百字小説『春を踏む』

20090412153540
 

 彼誰れ刻、ひとり庭園をさまよう。

 闇のグラデーションは地上に近づくほどかすれていく。遥か天空の墨流しの雲の下、低くたなびく真白き雲は桜だ。ちっぽけな弱々しい花が無数に集まって大胆に景色を変える。
 花弁がはらはらと舞い落ちて、風に踊り、路面を転がってゆく。
 盛りと同時に散り始めて地に池に東屋に髪に惜しげもなく降りそそぎ、降り積み、あらゆる隙間に入りこむ。

 あの日あの場所であなたと見た桜はもう記憶の中にしかない。それともこの花は、いつかの花の生まれ変わりだろうか?
 人は当たり前に逝き、花は当たり前に散る、終わらない春はない。
 真夜中、音もなく散りゆく桜は怖いほど綺麗だろう。誰にも看取られずに身を投げる。
 せめてひとひらでも鮮やかな軌跡をあなたの目に遺せたなら。
 溝に吹き溜まった花弁を手にとると仄白く軽く柔らかくひんやりと湿っている。
 これはほんの先刻まで樹上で群れ咲き揺れていたものの亡骸。死の間際にこそ華やぐ。

 いちめんに降りしきる死の中に立ちつくし、今生の春を踏む。
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