掌篇★ガチャポン

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五百字小説『卯憑き暮らし 花』

20090403124706

「クチュンッ!」
 首筋が冷たい、耳の後ろでズルズルと洟をすすりあげる音がする。

 公園の木々は霞のような桜に覆われている。
 遠くさわさわと揺れる杉林を兎は充血した涙目で恨めしげに睨みつけている。
「ヘプシッ」
 僕のコートの背中が盛り上がる、その下で柔らかなカシミアティッシュが多量に消費されているのだろう。
 一刻も早く家に帰ってシャワーを浴びて、花粉と兎の鼻水をすっきり洗い流したい。

「クシュンクシュンクシュンッ」
 ベージュのトレンチを着た女性の衿口からのぞく白兎の耳が派手に揺れて、羽ばたいて青空に浮いた。
 上空には更にたくさんの花粉が舞っているのでクシャミの音を響かせながら高く高く舞い上がり、みるみる小さくなっていく。きっと雨が降るまで落ちてこられないだろう。
「ヘヘヘッ……ヘックション!」
 僕の踵がふわりと宙に浮く、桑原桑原、そろそろ兎の奴を病院に連れていかなきゃ。残念ながら、僕は高所恐怖症なんだ。
 贋天使達のくしゃみでつむじ風が巻き起こり、薄紅の花弁が螺旋を描いて舞い落ちる。

 噂によると人に憑いていない兎は軽すぎて、クシャミで月まで跳んでしまうそうだ。


■■■■■■■■■■

■背中に兎が憑いてしまったという設定の五百文字シリーズの三作目です。

 私の鼻は相変わらずムズムズしていますが、小康状態が続いています。花粉症のような、鼻風邪のような。

■創作のモチベーションが低下しています。実は昨年の秋からずっと目標を見失っていて自らを騙し騙し書いていたのですが、いよいよ逃げられなくなった感があります。
 自分の書いている代物は怪談と言えるのか、カテゴリーエラーではないのか。
 そもそも自らが書く必要はなく、面白い本を読むだけで十分ではないのか?

 そんなことを悶々と考えていた矢先に「怪談文芸ハンドブック」を入手しました。
 読み進むうちに、私はまだ怪談の、物語の、とばくちに立ったばかりだなあと。読むべき書物は多く、登るべき山は果てしなく高く、遥かな海の広さに戸惑うような嬉しいような怯えるような。なぜ物を語りたいのかを今一度考えてみたいと思います。

■四月から、またも人事異動になり、通勤時間と勤務時間が増えました。環境の変化に弱いのでしばらく大変です。神様に今は書くなと言われているようです。(苦笑)
 でも、話が勝手にやって来てしまったので、WEB幽に掌篇「ほのか」を投稿しました。

■メールやお電話を下さった方々、ありがとうございます。深く感謝しています。m(_ _)m
 へろへろと生きております。
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