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八百字小説『稲生詣で』

 さても三十日間にも及ぶ物怪の来訪を終え、稲生平太郎は全くこたえないどころかむしろ怪異が絶えたことを惜しんでいた。物怪界は平太郎の噂で持ち切りであった。

「あの山ン本五郎左衛門殿が妖力の限りを尽して参らぬとはなんと豪胆な!」
「人間にしておくのは惜しい器」
「一目姿を拝みたいものだ」

 間もなく、物怪達の『稲生詣で』が始まった。退屈していた平太郎は喜んでこれを迎え打ち、夜毎、丁丁発止の戦いが繰り展げられた。それは物怪達の力試しの場となり、また稲生詣でを終えれば一人前の物怪とみなされた。
 しかし、そんな日々も長くは続かなかった。平太郎の十七の誕生日に怪異はピタリと止んだ。しばらくは寂しそうにしていた平太郎もやがては普通の生活に馴れ、所帯を持ち子を生した。

 その子が十六になった夜、再び物怪が訪れた。以来、稲生家の嫡子が十六になると決まって怪異の洗礼を受けた、そして親から家伝の木槌を譲り受けた。嫡子の中には小心な者もいる、物怪の通力で正気を失う前に木槌で西南の間の椽を打ち、山ン本五郎左衛門に助けを求めろ、そう代々伝えられた。さすれば物怪は退散し、その代では二度と現れない。稲生詣ではいつしか稲生試しと呼び名がかわり、物怪達のちょっとした娯楽になった。

「今度の跡継ぎは中々骨があるらしい」
「儂にかかれば一晩で泣き出すわ」
「泣かない方に女の首を五十」
「儂は赤子の目玉を百賭けるぞ」

 噂の主は麗しい乙女であった、怪異を怖がるどころか楽しみにして武芸の腕を磨いている。

「花、どこにいるのです! 見合いも断り物怪と戦うのが趣味だなんて」
「度胸があって良いではないか」
「度胸ではありませぬ、ずぼらなだけです」

 庭の樹上で昼寝をしていた娘は母の声に目を醒ました。

(夫を持つなど面倒臭いわ、同じ毛モジャなら化け物の方が余程可愛い。昨夜の物怪の愉快だったこと)

 物怪愛づる姫君は欠伸を一つすると瞼を閉じた。

 まもなく稲生詣でが復活するだろう。

■■■■■■■■■■

 今更ですが、上はイノモケ八百字応募作の加筆修正版です。

 募集〆切直前にハタと思い立ち、前日にジュンク堂で『稲生モノノケ大全』を購入し、〆切当日に掌編を書いて応募、玉砕。(当たり前だ!)

 おまけに、応募作は間違いだらけで深く反省した次第。
 これをベスト50に選んでくださった高原先生は心の広いなんて良い方なんだ! と感動しました。(涙) 残念ながら、イベントには仕事で行けませんでした。

 後日談として、〆切翌日に帰宅するとマンションの電気がつかないという怪異が!
 ……電気料金用のお金でモノノケ大全を購入し、応募のバタバタで支払いをすっかり忘れてたんでした。他にもガス・水道が次々に止まるという怪異が。(笑/これは嘘)
 コンビニで払い込んで電気はすぐに復活しました。

 数年前の夏、友人達と哲学堂で浴衣怪談会を行いました。風情があってとても良かったです。
 朝倉彫塑館も中庭が池になっていて、趣があって好きな場所です。
 幽霊や物怪が出そうな古い日本家屋に住みたい、京都の町家にも憧れます。
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