掌篇★ガチャポン

携帯掌篇のブログです。無断転載厳禁!

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

五百字小説『春を踏む』

20090412153540
 

 彼誰れ刻、ひとり庭園をさまよう。

 闇のグラデーションは地上に近づくほどかすれていく。遥か天空の墨流しの雲の下、低くたなびく真白き雲は桜だ。ちっぽけな弱々しい花が無数に集まって大胆に景色を変える。
 花弁がはらはらと舞い落ちて、風に踊り、路面を転がってゆく。
 盛りと同時に散り始めて地に池に東屋に髪に惜しげもなく降りそそぎ、降り積み、あらゆる隙間に入りこむ。

 あの日あの場所であなたと見た桜はもう記憶の中にしかない。それともこの花は、いつかの花の生まれ変わりだろうか?
 人は当たり前に逝き、花は当たり前に散る、終わらない春はない。
 真夜中、音もなく散りゆく桜は怖いほど綺麗だろう。誰にも看取られずに身を投げる。
 せめてひとひらでも鮮やかな軌跡をあなたの目に遺せたなら。
 溝に吹き溜まった花弁を手にとると仄白く軽く柔らかくひんやりと湿っている。
 これはほんの先刻まで樹上で群れ咲き揺れていたものの亡骸。死の間際にこそ華やぐ。

 いちめんに降りしきる死の中に立ちつくし、今生の春を踏む。
スポンサーサイト

五百字小説『卯憑き暮らし 花』

20090403124706

「クチュンッ!」
 首筋が冷たい、耳の後ろでズルズルと洟をすすりあげる音がする。

 公園の木々は霞のような桜に覆われている。
 遠くさわさわと揺れる杉林を兎は充血した涙目で恨めしげに睨みつけている。
「ヘプシッ」
 僕のコートの背中が盛り上がる、その下で柔らかなカシミアティッシュが多量に消費されているのだろう。
 一刻も早く家に帰ってシャワーを浴びて、花粉と兎の鼻水をすっきり洗い流したい。

「クシュンクシュンクシュンッ」
 ベージュのトレンチを着た女性の衿口からのぞく白兎の耳が派手に揺れて、羽ばたいて青空に浮いた。
 上空には更にたくさんの花粉が舞っているのでクシャミの音を響かせながら高く高く舞い上がり、みるみる小さくなっていく。きっと雨が降るまで落ちてこられないだろう。
「ヘヘヘッ……ヘックション!」
 僕の踵がふわりと宙に浮く、桑原桑原、そろそろ兎の奴を病院に連れていかなきゃ。残念ながら、僕は高所恐怖症なんだ。
 贋天使達のくしゃみでつむじ風が巻き起こり、薄紅の花弁が螺旋を描いて舞い落ちる。

 噂によると人に憑いていない兎は軽すぎて、クシャミで月まで跳んでしまうそうだ。


■■■■■■■■■■

■背中に兎が憑いてしまったという設定の五百文字シリーズの三作目です。

 私の鼻は相変わらずムズムズしていますが、小康状態が続いています。花粉症のような、鼻風邪のような。

■創作のモチベーションが低下しています。実は昨年の秋からずっと目標を見失っていて自らを騙し騙し書いていたのですが、いよいよ逃げられなくなった感があります。
 自分の書いている代物は怪談と言えるのか、カテゴリーエラーではないのか。
 そもそも自らが書く必要はなく、面白い本を読むだけで十分ではないのか?

 そんなことを悶々と考えていた矢先に「怪談文芸ハンドブック」を入手しました。
 読み進むうちに、私はまだ怪談の、物語の、とばくちに立ったばかりだなあと。読むべき書物は多く、登るべき山は果てしなく高く、遥かな海の広さに戸惑うような嬉しいような怯えるような。なぜ物を語りたいのかを今一度考えてみたいと思います。

■四月から、またも人事異動になり、通勤時間と勤務時間が増えました。環境の変化に弱いのでしばらく大変です。神様に今は書くなと言われているようです。(苦笑)
 でも、話が勝手にやって来てしまったので、WEB幽に掌篇「ほのか」を投稿しました。

■メールやお電話を下さった方々、ありがとうございます。深く感謝しています。m(_ _)m
 へろへろと生きております。

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。