FC2ブログ

掌篇★ガチャポン

携帯掌篇のブログです。無断転載厳禁!

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『燈刻の迷い子』

 迎え火の後で縁側の盆提灯に火を点していると、勝手口が何やらガタガタと騒がしい。
 はて、通いの女中は帰した筈だし、こんな時分に誰だろう?
 はァい、と戸を開けたが誰もいず、風はそよりともない。しばらくして、又ガタガタ。
「誰だい? ふざけてると承知しないよ」
 磨り硝子に小柄な白い影が映じた。
「暗くて、道に迷って、家に帰られん。姐さん、わしらに灯ィ貸してくれんか?」
 おずおずと、幼い泪声がすがる。
「どこの子だい? 中に入って待ってな、着替えてあたしが送ったげるよ」
「いいや、灯ィだけでじゅうぶんや」
「餓鬼が、一丁前に遠慮するんじゃないよ」
 さあ、と戸を開けると闇の中を跣足の童子らが蜘蛛の子を散らすように駆けていった。
 手に手に底の尖った赤い提灯を提げてる。
「嗚呼、……やられた!」 仏間の精霊棚に供えてあった鬼灯の実が、萼ごと摘み取られて、残りは一つ、二つ。
「仕様がないねぇ、気をつけて帰んなよ」

 盆明けの晩は壇那もお見限りで、蚊帳の中に腹這いになり、煙菅を喫っていたら、
「グエッ、グエッ、グエッ」
 蝦蟇が啼いた。田の畦道でもあるまいし、しもた屋の建てこんだこの辺りでは珍しい。
 寝苦しくて外に出ると家の前の露地に真っ赤な狐火がちろちろと燃えている、驚いて目を凝らすとぺしゃんこに潰れた鬼灯だった。 ジャリッ、何かに躓いて足許を見ると敷石の上に風車やビー玉、面子が置かれていた。
「お礼参りだなんて、殊勝な心掛けだねぇ」
 肌襦袢一枚で上框に脚を組んで、残った鬼灯の実を指先で丁寧に揉んだ。笛にして鳴らそうと口に含んで中身を吸い取っていたら、皮が破れて口中が苦くなり、酷く咳こんだ。
「グエエッ」
 夜陰で大きく啼いたのは蝦蟇か鬼灯笛か。
スポンサーサイト

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。