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メル友の男性と初めて会った。
想像通り誠実で魅力的な人柄で、地味な服装や後頭部の寂しさも気にならなかった。
二度目に会った時、彼の服装がこざっぱりとしていて何だか別人のような印象を受けた。髪型が変わったせいかしら? 相変わらず良い人だったのだけれど。
三度目に会った時、髪型が別人だった。明らかに髪が増えている!
マズイと思いつつも頭に目がいってしまう。生え際と違う方向から髪がかぶさっていて凄く不自然だ。
吹き出しそうになるが、死んでも笑うわけにはいかない。ツライ。
どうなっているのか気になり、会話も弾まずに早々に別れた。
……結局、彼とはそれきりになった。
(『遊歩人』掲載)
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壊れた車を乗り捨てた俺は、広大な砂漠を一人、さまよっていた。
餓えと渇きと疲労で体力の限界が来た。
倒れ込んだ俺の指先に何かが触れた。
掘り出すとカップラーメンだった。
バリバリと蓋を剥がし「しまった、割り箸も湯も無いじゃないか」とつぶやいた途端、白い煙が立ち上り、弁髪の巨人が現れた。
「ご主人様のお望みのままに」
巨人は空中から割り箸とヤカンを取り出した。
剥がした蓋には《カップ魔人の素》と書いてあった。
「なんだ、ラーメンじゃないのか」
俺が叫ぶと「三つ目の願いですね?」巨人は本物のカップラーメンを取り出し「では、これにて」と消えた。
俺が過ちに気付いたのは、本格とんこつスープを全部飲み干した後だった。
(『きょとん!』収録)