掌篇★ガチャポン

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三百字小説『あの路地を抜けて』

 この町に越してすぐに妙なことに気づいた。

 寂れた下町だが、やたらと路地が多く入りくんでいる。
 昼間は猫と年寄りしか居ないのに日没から夜にかけて沢山の子供を見掛ける。遅くまで戸外で遊んでいるようだ。
 その癖、区では住民の高齢化を憂いている。

 残業で遅くなり、近道をしようと常よりも手前の角を曲がった。
 その路地はずっと先が細くなっており通り抜け出来そうにない。
 前を歩く老婆が杖を落としたので拾って後を追うと老婆は歩を速め、みるみる小さくなっていく。
 ふいにグンと道幅が広がり体が軽くなった。
「高鬼する者、寄っといで!」
 目前を走るおかっぱ頭の少女が叫ぶ。

 私はブカブカの革靴を脱ぎ捨て、ジャングルジム目指して駈け出した。

  (『遊歩人』09/7号掲載)

■■■■■■■■■

 今日、仕事から帰宅するとマンションの郵便受けに『遊歩人』が入っていました。

「最近、投稿していないのに」と不思議に思いながら開くと数年前に応募した話が載っていました。既にいつ書いたのか記憶がさだかではありません、こんなに時間があいて載ると自分の作品でないようで何だか不思議な気分でした。

 ノリと勢いと気分で書いているので、今なら同じ話は書けないでしょう。私の場合、作品は水物だと思います、PNがいけないのでしょうか。

 ともあれ有難いことです。さて、ご褒美の図書券で何を買おう?  
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五百字小説『髑髏遊戯』

 ねぇ、あなた。

 薔薇も指輪も着物もいらない、お金も土地も愛もいらない。
 ただひとつ、あなたが死んだら髑髏を頂戴。

 春の宵には御酒を満たして、花弁浮かべて花見をするわ。

 夏の晩には、蛍を入れて団扇で追って夕涼みしましょう。

 秋の夜長は蝋燭灯して、マグダラのマリアよろしく話し掛けるの。

 冬の未明は仔猫のように、胸の間で暖めるわ。

 腐りかけた果肉の下の瑞々しい種子。
 濡れた肉に埋もれた歪んだ真珠。
 真っ赤な嘘の中の真っ白な真実(ほんとう)。

 漆黒の髪できつく縛って、白い腕で抱き締めて、緋の血潮で染めてあげる。

 この指で、この肌で、この舌で、可愛がって、弄んで、汚しましょう。
 あなたが私にしたように。

 何処にいても気にしない。何をしてもかまわない。誰を抱いても嘆かない。

 だけど最期は必ず、あなたの髑髏をあたしに頂戴。

■■■■■■■■■■


■例によって携帯データが飛んだので(ええ、もう、なれましたよ)、消えた掌編を脳内復旧しました。

 以前に『五百文字の心臓』のテーマ「頭蓋骨を捜せ」投稿用に書いた掌編ですが、方向性が違う気がして投稿できませんでした。
 もちろん、モデルはいません。
「色気」を目指して書いて挫折しました。やはり、無い袖は振れず。(苦笑)

■近況

 昔痛めた腰が痛くてヘロヘロです、おまけに近来稀にみる絶賛スランプ中!!(笑)
 あーッ、仕事を休んで湯治に行きたい。 

五百字小説『春を踏む』

20090412153540
 

 彼誰れ刻、ひとり庭園をさまよう。

 闇のグラデーションは地上に近づくほどかすれていく。遥か天空の墨流しの雲の下、低くたなびく真白き雲は桜だ。ちっぽけな弱々しい花が無数に集まって大胆に景色を変える。
 花弁がはらはらと舞い落ちて、風に踊り、路面を転がってゆく。
 盛りと同時に散り始めて地に池に東屋に髪に惜しげもなく降りそそぎ、降り積み、あらゆる隙間に入りこむ。

 あの日あの場所であなたと見た桜はもう記憶の中にしかない。それともこの花は、いつかの花の生まれ変わりだろうか?
 人は当たり前に逝き、花は当たり前に散る、終わらない春はない。
 真夜中、音もなく散りゆく桜は怖いほど綺麗だろう。誰にも看取られずに身を投げる。
 せめてひとひらでも鮮やかな軌跡をあなたの目に遺せたなら。
 溝に吹き溜まった花弁を手にとると仄白く軽く柔らかくひんやりと湿っている。
 これはほんの先刻まで樹上で群れ咲き揺れていたものの亡骸。死の間際にこそ華やぐ。

 いちめんに降りしきる死の中に立ちつくし、今生の春を踏む。

五百字小説『卯憑き暮らし 花』

20090403124706

「クチュンッ!」
 首筋が冷たい、耳の後ろでズルズルと洟をすすりあげる音がする。

 公園の木々は霞のような桜に覆われている。
 遠くさわさわと揺れる杉林を兎は充血した涙目で恨めしげに睨みつけている。
「ヘプシッ」
 僕のコートの背中が盛り上がる、その下で柔らかなカシミアティッシュが多量に消費されているのだろう。
 一刻も早く家に帰ってシャワーを浴びて、花粉と兎の鼻水をすっきり洗い流したい。

「クシュンクシュンクシュンッ」
 ベージュのトレンチを着た女性の衿口からのぞく白兎の耳が派手に揺れて、羽ばたいて青空に浮いた。
 上空には更にたくさんの花粉が舞っているのでクシャミの音を響かせながら高く高く舞い上がり、みるみる小さくなっていく。きっと雨が降るまで落ちてこられないだろう。
「ヘヘヘッ……ヘックション!」
 僕の踵がふわりと宙に浮く、桑原桑原、そろそろ兎の奴を病院に連れていかなきゃ。残念ながら、僕は高所恐怖症なんだ。
 贋天使達のくしゃみでつむじ風が巻き起こり、薄紅の花弁が螺旋を描いて舞い落ちる。

 噂によると人に憑いていない兎は軽すぎて、クシャミで月まで跳んでしまうそうだ。


■■■■■■■■■■

■背中に兎が憑いてしまったという設定の五百文字シリーズの三作目です。

 私の鼻は相変わらずムズムズしていますが、小康状態が続いています。花粉症のような、鼻風邪のような。

■創作のモチベーションが低下しています。実は昨年の秋からずっと目標を見失っていて自らを騙し騙し書いていたのですが、いよいよ逃げられなくなった感があります。
 自分の書いている代物は怪談と言えるのか、カテゴリーエラーではないのか。
 そもそも自らが書く必要はなく、面白い本を読むだけで十分ではないのか?

 そんなことを悶々と考えていた矢先に「怪談文芸ハンドブック」を入手しました。
 読み進むうちに、私はまだ怪談の、物語の、とばくちに立ったばかりだなあと。読むべき書物は多く、登るべき山は果てしなく高く、遥かな海の広さに戸惑うような嬉しいような怯えるような。なぜ物を語りたいのかを今一度考えてみたいと思います。

■四月から、またも人事異動になり、通勤時間と勤務時間が増えました。環境の変化に弱いのでしばらく大変です。神様に今は書くなと言われているようです。(苦笑)
 でも、話が勝手にやって来てしまったので、WEB幽に掌篇「ほのか」を投稿しました。

■メールやお電話を下さった方々、ありがとうございます。深く感謝しています。m(_ _)m
 へろへろと生きております。

五百字小説『卯憑き暮らし 雪』

20090227052004
 

 僕が浴室に入ると兎は脱衣籠の中に蹲る。

 風呂から上がると再び背中に飛び付くが裸の皮膚に肢がかからないらしく、つるりと滑り落ちてバスマットの上で鼻を鳴らしている。
 パジャマに着替えるとバックパックみたいにぴたりと背中に張り付くので肩が凝る。

 僕が勤めに出る時は、スーツの上着とコートの間から、ぴょこんと耳だけ覗かせている。
 ほとんど誰も気付かないが、たまに小さな子供や野良猫が目を丸くして見ている。
 
 今朝、大雪が降った。兎はぷるぷると身を震わせると雪の上にダイブして、白くハレーションをおこして見えなくなった。
 やれやれ厄介払いができたと窓を閉めたが首の後がすかすかして背中がすぅすぅする。追い出すのは春にしようと探したがいない。
 空き地に行くと雪の中からたくさんの耳が生えていた。掴んで引っ張ると「キーッ」と金属質の声で啼いて、すぽんと兎が抜けた。
 あれ、耳が一本しかない? 三本耳だの四本耳だの五本耳だのの兎を全部抜いたら、銀紙を噛んだみたいに奥歯がじんと凍みた。犬に紐をつけて引き抜かせれば良かった。

 家に帰ると屋根の上から、雪混じりの兎がどさどさ落ちてきて埋められた。
 ……重いッ!     

■■■■■■■■■■

★誰も覚えていないでしょうが(笑)、以前にブログに載せた『卯憑き』の続編です。

 一月の終わりに書いて、雪が降ったらブログに載せようと思っていて気がついたら二月も終わりですよ。慌てて載せてみます。

 イメージのもととなった超絶可愛い兎イラストを勝手に掲載できないので、ウチにあった兎のアイピローの画像を貼ります。

 今年は桜の開花が早いそうです。春や春、ぽやんとお花見に行きたいですねぇ。桜が大好きなので、花粉症になってもお花見をします。

■平たくて胴長の兎のアイピロー。中にラベンダーのサシェが入っていて良い香りです。くしゃみが出そうになると嗅いでいます。   

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